1966年、米軍の核弾頭搭載機が海に墜落した。回収に当たっている深海ダイバーの中に一人の黒人の姿がある。彼の名はカール・ブラシア(キューバ・グッディングJr.)。その様子をテレビで食い入るように見つめているのは最上級兵曹長ビリー・サンデー(ロバート・デ・ニーロ)である。
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1943年、ケンタッキー州ソノラ。ブラシア少年は池に飛び込むと、水中を魚のように泳ぎ回った。貧しい小作農民の子ブラシアは父の仕事を手伝おうとするが、父は息子に自分と同じ道を歩んでほしくはなかった。成長したブラシアは海軍に入隊し、「ここに戻ってくるな」という言葉と共に父から手製のラジオを手渡される。そこには“ASNF”というイニシャルが彫ってあった。
海軍でブラシアを待っていたのは、黒人はコックか雑用係という現実だった。しかし艦艇ホイストに乗り組んだブラシアは、泳ぎの才能を見てとったプルマン大佐(パワーズ・ブース)から甲板兵に取り立てられる。折しも同じ頃、ヘリの墜落事故で仲間を救出しようとしたビリー・サンデーは空気塞栓症にかかってダイバー生命を断たれてしまう。しかし、この一件がブラシアのダイバーへの夢を駆り立てた。2年に渡って100通以上の嘆願書を書いた末、彼はニュージャージーにあるダイバー養成所への入学を許可される。
ここには教官としてサンデーが赴任していた。検問所で会うなり「高望みするな」と言い捨てるサンデー。黒人に門戸を開いたばかりの養成所では、司令官ミスター・パピー(ハル・ホルブルック)を筆頭に露骨な人種差別が横行していた。訓練生は彼と同じ宿舎に寝ることを拒否し、ただ一人吃音症のスノーヒル(マイケル・ラパポート)だけがルームメイトになった。サンデーのブラシアへのイジメは徹底していた。訓練中に事故が起こったとき、ブラシアは訓練生アイザートを救い出すが、英雄としてサンデーから表彰されたのは途中で逃げ出したルークだった。サンデーはブラシアが大切にしていた父のラジオまで壊した。しかし、彼はくじけなかった。厳しい実地訓練に耐え、学科試験でのハードルも図書館での勉強でクリアしていった。それを支えたのは図書館で知り合った美しい女性ジョー(アーンジャニュー・エリス)の存在だった。しかし、間もなく郷里から父の死の報が届く。
半年間の訓練も終わり、卒業試験の時がやってきた。司令官からブラシアを合格させぬよう命じられたサンデーは、海底で組み立てる工具の部品をわざとバラバラに散らして海に放り込む。冷たい水の中で作業が長引けば、体温を失って死んでしまう。既に9時間以上が経過した。もう限界だ。ブラシアがギブアップするまで放っておくよう命じる司令官。しかし、サンデーは引き揚げるよう指示し、訓練生がロープを引き始めた。その時、ブラシアから完成の合図が届く。彼はついにやったのだ。
命令に逆らったサンデーは降格された。ある日、ブラシアは父のラジオが修理されてベッドの上に置いてあるのに気づく。“ASNF”という頭文字の横には、アルファベットが書き足されていた。そこに現れたのは“生涯忘れない息子(A
SON NEVER
FORGETS)”という言葉だった。
ブラシアとジョーは結婚し、子供も生まれた。数年後、妻グウェンと共にあるパーティに出席していたサンデーは、大佐に昇格したハンクスと再会し、口論になった勢いで殴りつけてしまう。サンデーは再び降格させられた。
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再び1966年――謹慎を命じられたサンデーが見ていたテレビに、スペイン沖の公海で核弾頭の回収作業に携わるブラシアの姿が映し出されていた。ブラシアは接近してきたソ連の潜水艦にロープを引っかけられて危うく命を落としそうになるが、そのおかげで核弾頭を見つける。しかし、艦に引き揚げる際に起きた事故で脚に大けがを負い、切断は免れたものの経過は思わしくなく、ダイバーとしての生命は断たれたも同然だった。
その頃、アルコール依存症のリハビリ施設でブラシアの事故を知ったサンデーは、ある雑誌の切り抜きを送った。それは脚を切断しても飛行士として活躍した人物の記事だった。ブラシアはこれを読んで再び夢に賭けた。ジョーが止めるのも聞かず、脚を切断し、義足をつけてリハビリを開始した。
そんなブラシアの元に、ある日サンデーが現れる……。
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